3-7のメートリアンvsハルベルト戦について

これはゆらぎの神話・アリュージョニスト・アリスピ Advent Calendar 2016の記事です。

 

3-7 「言理の妖精語りて曰く

アリュージョニストのなかでも特に最高の戦いと名高いvs白きメートリアン戦。これについてやっぱり語りたいので私なりに書きます。オタク語りです。

 

あわせてみずでらさんのこちらも是非読んでどうぞ。ミルーニャはいいぞ。

mizuderarium.hatenadiary.jp

 

 

 

さて、3-7が始まってしまいました。この後の展開で無茶苦茶ミルーニャに感情移入しちゃうので裏切りという言葉を使いにくいです。

「この世の全ては『もの』ですよ。少なくとも私たち杖使いにとってはそうです。この私自身がそうであるように、ねっ」

ここ、アイデンティティが感じられてぐっとつよくなります。このへんのミルーニャの強さ、エモさはみずでらさんの記事でどうぞ。

まさに最強の風格を見せつけるメートリアン。最高ですよね。ペイル、ナト、イルスが立ち向かいます。vs不死者戦のセオリーを打ち砕くシーンです。窒息、再生が間に合わない破壊。過剰再生。すべて対策済み。

 

ここで不死者についての生物学的な解釈が入ってきます。「絶対に劣化しないテロメアテロメアとは、DNAの末端の領域で、細胞が分裂するたびに短くなることで細胞分裂の限界を規定しているとされています。生殖細胞やがん細胞ではテロメアーゼという酵素によって伸長されます。つまりミルーニャの細胞の増殖、修復に限界がありません。しかもそれが完全に制御されているという。「恒久的良性腫瘍」bening=良性、チューモア=tumor=腫瘍でそのままですね。ここで、癌について生物学的に解説すると、そもそも通常の体細胞の増殖制御がおかしくなったのに修正されてない状態、なんですが、このことから「悪性新生物(ネオプラズマ)」=neo(新しい)plasma(形態)という言い方もします。新生物なんです。本文では、「呪的新生物(ネオエクトプラズマ)」という言い方をしていますね。エクトプラズマはecto(外の)がついていて、エクトプラズム(=物質化した霊魂)とかけた造語になっています。しゅごい。

 

ハルベルトの呪文が完成します。このへんからのキレキレのバイオサイエンス用語ラッシュで私はもうあびゃああああって感じです。「アポトーシスの誘導」「テロメアーゼの不活性化アポトーシスは細胞の自殺です。細胞が「お?ワイ癌化しとるやんけ!死んだろ!」と自殺するわけですね。免疫細胞によって誘導されることもあれば、自分で判断することもできます。まあ当然がん細胞は様々な方法で回避してるんですけどね。「おいで、マクロファージ」・・・ここでマクロファージが来るかああああああ。通常の免疫機構とはちがいますがここでの登場ですよ。マクロファージは白血球の一種ですが、説明される形態はむしろファージにちかいです。

ファージ - Google 検索

ペレケテンヌル型。マクロ=プログラム言語からの呪文喰らい(ファージ)という持っていき方。マクロを食べるファージ。マクロファージについてはこの動画がわかりやすいですね。

www.youtube.com

マクロファージは体内の異物を食べる食作用を持つ免疫細胞で、細胞傷害性を持つT細胞に食べた細菌の抗体を提示したり、サイトカインというのを出して他の免疫細胞を活性化する役割を持ちます。そして食作用を屍肉食いになぞらえてカラスに結びつける手法。【闇の静謐】ダーク・トランキュリティというのはメタルバンドの名前でもありますね。

ダーク・トランキュリティ - Wikipedia

 

そしてトライデント来襲。アズを守ろうとするメートリアン。「撃ち落とせ、【ブラストビート】!!」いちいちアンロック!っていうのが最高にかっこいい。遺伝子やタンパク質の構造という情報を打ち出す弾丸。ブラストは強い一吹き、爆発みたいな意味もありますが、この場合はこっちでしょう。

blast.ncbi.nlm.nih.gov

塩基配列やタンパク質の情報検索の最重要サイトです。配列を入力して、近い構造を持つものを検索できます。ここでの検索を「ブラスト掛ける」とか言いますね。

 

ちょっと塩基配列について補足します。私達の全身の細胞には核があって、そのなかにDNAの二重鎖が染色体という形で折りたたまれています。

「染色体」という本の中に「DNA(物質名)」というページがたくさんあって、それにはATCGという四文字で情報が刻まれています。これが「遺伝子」という情報です。生物の基本的全情報ですね。これを細胞が参照するときは、「RNA(物質名)」というのにコピーをとって格から出して、それをリボソームという場所でRNA三文字が1つのアミノ酸、という風に翻訳されていきます。DNAの連なりがRNAの連なりに、それがアミノ酸の連なり(=タンパク質)に翻訳されて、私達の体は作られます。つまり遺伝子っていうのはざっくりいうとタンパク質の設計図ライブラリーですね。

 

このあとティリビナの民とイルスのエピソードが入ります。これも大変エモいですね。ペイルも汚名挽回です。そしてここでのメイファーラからの情報提供、攻殻機動隊みがありますね。鬼気迫るメートリアン・・・❗

アストラルよりマテリアル属性でゴリ押すと言ったメートリアンにマテリアル属性で返すハルベルト。コルセスカ属性を打ち出し、自身の優秀さを誇示するようにさらなる強さを見せつけるメートリアン。こっからのエモさはみずでらさんが触れてますね。こういう絆とかを否定するキャラクターって絶対負けますけど、ここではそのバックグラウンドと無茶苦茶な強さが提示されるので応援したさが出てくるほど。エスト達の「共感」との対比。あらためてミルーニャに惚れ込む私。すげえよこの理想・・・❗

 

ハルベルトの呪文が完成します。「レトロウイルス」・・・やられた!って感じですね。レトロウイルスについて解説するならいろいろな要素が必要になります。ウィキペディア読んどいて、というのが地味に確実かもですが解説します。しかし、ここであえて不正確かもですがかっこいい言い方をつかいます。レトロウイルスはいうなれば「あらゆる生命が神によって創造されたのではないという証明」です。生命の神秘性の凋落の象徴。(これアリュTRPGで使いたい。)

ウイルスというのは細菌と違って生き物ではないです。タンパク質と核酸(DNAかRNA)からなる非生物です。生物の細胞の中に侵入して、自身の核酸を放出、細胞内の機構を勝手に使って増殖します。ほとんどの風邪はウイルス感染です。

さっき言ったDNA→RNA→タンパク質の順番は「セントラルドグマ(中央教義)」といいます。この順番は絶対だと考えられてきました。レトロウイルスが発見されるまでは。正確には、レトロウイルスが自身のRNAをDNAにして、細胞の中に組み込んでしまう逆転写酵素が発見されるまでは。これまで、ウイルスがDNAを細胞の中に入れっぱなしにするというのはありましたが、パソコンで言うとソースコードに自分のプログラムをいれるウイルス。前代未聞でした。この状態をプロウイルスといいいます。これがなんでそんなにすごいのかというと、本来遺伝子は親→子と垂直にしか遺伝しないはずなのにウイルス→人といきなり変化を誘導されるということです。

人間のDNAのうち、さっき言ったタンパク質のコードが書いて有る部分は1.5%なのに対し、内在性ウイルス、つまり人類がこれまで感染してきたレトロウイルスの化石は8%です。進化の原動力の1つです。生命は初めから完成していたのではなく、自身を進化させてきただけですらなく、外部の、非常に利己的な因子に依っても形付けられてきたということです。有名どころだと、胎盤での細胞接着に、ウイルスの外膜の細胞内に侵入する時のタンパク質シンシチンが関わってるとかですね。

語りすぎましたので次イキマス。

 

呪文喰らいの構成因子は5つといいます。

・呪文を食べる記述

マクロファージですね。抗原提示細胞としての機能にも触れられてます。

・各種の命令を出す記述

ヘルパーT細胞

・呪文を破壊する記述

NK細胞、キラーT細胞

・抗体を生み出す記述

B細胞

・呪文を記憶する記述

モリーB細胞

あたりですね。これらを機能不全に陥らせるレトロウイルス。つまりはまあHIV、いわゆるエイズウイルスですね。

模倣子を逆転写する。つまり逆転写酵素も出てきます。ちなみにテロメアーゼも逆転写酵素です。

 

こっから先はべつの意味でうあああああです。ミルーニャの過去。大学時代の話とか身につまされすぎてもうつらい。全部許す。そして解決へ…

 

あと補足すると、模倣子という概念が出てきますね。ここでは遺伝子、呪文などと近い意味で使われています。SCP勢からしたら「ミーム」という形で割りと身近ですが、それ以外でも使われ始めました。意伝子という言い方がわかりやすいかもしれません。

ミーム - Wikipedia

 

アリュージョニストは、いいぞ。(締め)