0.オープニングトーク

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Figure Drawing For All It’s Worth翻訳

「オープニングトーク」

15〜18ページ

 

 


これまで長年、人体の描き方についてのこれまで以上の本が明らかに必要だと感じていました。これまで出会ってきた若いアーティスト達に勧められるような本を私はずっと待っていたのです。しかし最終的には、(その方の著者としての能力には関係なく)実際の商業アートの領域の人にしか書けないということに気付きました。明確にしなければならない問題に直面し乗り越えた経験のある人にです。かつて始めたばかりの頃の自分が、売れるような作品を作ることに手を貸してくれる知見をどれだけ必死に探していたか思い出したのです。自分で自分をサポートしなければならないという珍しくはない状況の中で、それは芸術で名を挙げるか転職しなければならないかの苦境でした。

この広いアメリカで、君達の多くはそういった苦境にあります。どこからともやら訪れたわけのわからない衝動に取り憑かれてもいる君は「芸術語」を話すことを望んでいます。君は描くのが好き。君は上手く描けるようになりたい。君はチャンスさえ有れば絵で食べて行きたいとマジで思ってる。たぶん、私は君を助けられます。私は心からそうであれば思っています。なぜなら、君が君がそうやって過ごしているどの一分一秒も私が同じように過ごしてきたものからです。私の経験から君が欲していてかつ必要な情報をまとめられると思う。これまでなされてきた良い芸術を過小評価するふりはしません。それに関して難しいことは常に3つ。いい芸術作品を見つけること、何が実用的な価値を持っているのか整理することそしてそれを実践に移すことです。成功への大きなチャンスは、単なる技術的な知識ではなく作品への精神的なアプローチにあると信じています。そして精神的アプローチはそんな頻繁に強調されることはないのでこの機会に提供します。

私は読者が興味を持ってるのはただ絵を描くことだけでなく、効率的で自立した職人になりたいと心の底から望んでいると予想します。君がペンや鉛筆で自身を表現するという欲求はただ強いのでなくもはや否定不可能なものであり、そして君は「何事かを成さなければならない」と感じています。自身のすばらしい能力を発揮するとき、才能は飽くなき情熱が一緒でなければ意味は小さいと、また才能というものは限界のない努力と伴っていなければならないと感じます。その努力こそ最終的には中途半端な熱意を挫くような困難を飛び越える力をくれるのです。

芸術家が何を持ってあるものを芸術たらしめるか定義してみましょう。どんな些細な作品も、メッセージや目的、仕事などの前提を持って作られ始めます。では、その芸術家が創ることができるメッセージの最もダイレクトな解答、シンプルな解釈とは?題材を丸裸に、最も効率的な要素に剥いてみるとそれは精神による手順なのです。その作品の目に入るすべての部分は、全体の目的と重要な関係を担っているかどうかを汲まれなければなりません。誰かが何かを見て、そして描かれた絵は、見たものがいかに重要かとそれにどう感じたかをを表現しています。なので絵の中では、まさにそこに何があったのか、ということよりも作者にとって何が最も重要かが強調されます。もっとも重要なキャラクターの頭にいちばん面積を割いて描くことでしょう。そしてもっとも重要なポイントとなる、表情とポーズでそのキャラクター感情を表現する手段を熱心に探すことでしょう。最初に可能な手段全てでそのキャラクターへの関心を描くことでしょう。言い方を変えれば、単純にそれは存在するのだから、ただ受動的に受け入れるのでなく計画し考えて描れるのです。芸術史ではそれほどむかしではないころから本物そっくりに描くという技法は見る人の興味をひくのには十分なほど関心を集めていました。今日ではカラー写真とこの点においてはより優れていっているカメラによって、単なる見たままの表現では不十分となりました。キャラクター化、感情的にしたり動的にする、選択と吟味、単純化と従属化、そして強調。どうにかして見たままの事実から適切な事実に至る道より他の道はありません。どうやって描くかが一割で、『何を描くか』が九割です。物事の形状を細部にいたり見たまま描くのはもはや写真ができること以上のことはできないのです。”従属化”は拡散、色や数値の周囲との近似、単純化、不要な細かいところの単純化または除去によって行われます。”強調”はそれぞれその逆、つまり鋭さ、対比、細かさと仕掛けの追加によって行われます。

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この機会にあなたたち読者に強調しておきたいこと。それは、作品作りの中で君自身の存在がどれだけ重要かということです。君、君の人間性、君の個性がまず有りきです。君の絵は君自身の副産物です。君の絵の全ては小さな君自身ですし、またそうあるべきなのです。それらは君の知識や経験、観察、好き嫌い、いい感じの持ち味、考えの反映なのです。つまり実際の集中点の中心には君がいて、そして君の作品は君がしている自己改善に沿ったものなのです。私はこのことに気づくのに人生スパンで時間がかかりました。お絵かきの全てについて話す前に重要な事を強調しておきましょう。明確にその情熱を意識に植え付けるために、君自身を君に売り込むことです。その情熱とは、ペンの先の方からではなくペンのもう一つの端が向いている方角(=自分自身)から来るとうことを一先ず知っておかなければなりません。
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私が学徒として考えていたのが、なにかこう公式のようなものがあって、それを何処かで手に入れれば芸術家になれる、ということでした。その公式のようなものは本にはなっていませんでした。昔ながらの鋭気、自立、永遠の切磋琢磨。自分のやり方を発展させつつしかし他の仲間からも学ぶ鋭気、自分のアイデアの実験、自分自身の観察、それらの自分を改善させるやり方を厳格な規律で行うということ。これまで、自分の能力や精神と肉体の健康のケアの重要性を強調する、あるいは鋭気をもって能力を最大限に活かすための暗示を提供してくれる本をついぞ見つけることはかないませんでした。それは本に書いてあるようなことではありませんが、その本の著者も自分のパーソナリティについて取り組むことと技能よりも大事なことがあるということに気づいていても悪気があって書いてないのではないでしょう。芸術の世界で何かに取り組むということは人間を構成する要素が全て揃っている科学から離れている行為です。最低限、私は読者と友情を確立しようと決めました。私が長年取り組んできた手腕に君たちを歓迎いたします。もし私が(カジノの)ブルーチップを持っていたら君の前に並べましょう、君がゲームに参加できるように。君たち一人ひとりより多くの経験を知ってるとは断言できない。しかし、もしある誰かが十分に幅広い多くの問題を経験しているなら、それは疑いなくほかの人にも適用されるでしょう。そういった問題の解決法の提供はまさに問題の解決として提供されるでしょう。私は自分にとって助けとなった事実と基本的な要素の詰め合わせセットを提供できます。より売れる絵をかけるようになれる疑いようもなく実用的なヒントと道具、理想化の事をお話しましょう。ただ、この本に求められているのは普遍的な事ですが、私自身の経験は同期の平均的な経験からおおきく逸脱はしていません。なので、私自身を基準として設定することなく知見を提供します。実際、可能なら私の視点または技術的なアプローチをベースとした読者の自由な自己決定と自己表現の部分を残しておきたいのです。私の経験は単に一般に求められることを明確化するために用います。

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はっきりさせておかなければなりません。売れる絵を描くということはとは”いい絵”を描くということであり、”いい絵を描く”ということはビギナーさんよりもプロフェッショナルにとって大きな意味を持ちます。それは、その描かれた人物の図に説得力がありかつ魅力的であるということを意味します。実際の、あるいは普通のプロポーションより理想的に描かれるべきです。定まったアイレベルまたは視点からの遠近法で描かれるべきです。目に見える位置も服やカーテンに隠れている位置も解剖学的に正確であるべきです。光と影は迫真に迫るクオリティで制御されるべきです。動きやジェスチャー、などの動的な表現の質には説得力があるべきです。”いい絵を描く”ということは偶然の結果でもミューズのお導きを受けた瞬間の結果でもありません。それは多くのファクターの統合で、それらをよく理解し熟練して扱うことによってなされます。まさにデリケートな外科手術のように。それらファクターの一つ一つは表現の道具または一部そのものになると言っておきましょう。そういった表現の道具に熟練してこそ、インスピレーションや個々の感情を活かせるようになるのです。そういったファクターを外すことはいつでも誰にでもできることです。どんなアーティストにも「いい作品」「悪い作品」があります。そして悪い方を投げ捨て、新しく何かを始めるでしょう。アーティストはもちろん何故その作品が悪いのか明確な分析をすべきです。そして普通はもっとも基礎的な部分に戻ることを余儀なくされます。悪い作品は基礎的な失敗から生まれるのです。これはいい作品が基礎的な部分に間違いがないのと同じくらい確かなことです。
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なので、役にたつお絵かきの本というのは解剖学の学習のように一つのことだけを取り扱うことはありません。またそういった基礎的なファクターを良い絵を描くために探し組み合わせることもしなければなりません。それは芸術的な美学と売るための可能性両方についての技術指南や解決すべき問題を示しているべきです。そうでなければ、読者は部分的にしか情報を得られず、一つの角度からしか学べないのでまだもがいていることでしょう。
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君のことを「パンとバター問題(自分の職業についての問題)」に苦しんでいる若くアーティストととみなしてもいいでしょうか?いつだって十分な技術を手にすれば、収入が君を待っていることでしょう。君の収入は君の技術の発展に従って増えていくでしょう。実用的なアートの領域では、他のどこでも同じようにランクは間引かれます。新しく異なる実際の技能に対して優しく門戸を開いている広告代理店や出版社、リトグラスハウス、美術商など存在しません。どこもいつだってドアを閉ざしているのが普通です。不幸にもだれでもはじめは凡人です。概してどんな優れた商業アーティストもはじめは平均的な才能しか無いのです。
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私がアートスクールに二週間通った後家に帰る用にアドバイスされたことを白状しても?その経験をしたことで縁起の良くない始まり方に対しての気持ちの耐性をつけることが出来ました。これは人に物を教える動機にもなりました。
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表現の個別のそれぞれは、疑問なく芸術家の最も価値のある資産です。私の作品やその他の作品でも、複製しようとする、あるいは複製する行為そのものは致命的なエラー以上のものを生まないでしょう。他者のスタイルを使うのはあくまで一人で歩けるようになるまでの松葉杖としでのみとしましょう。人々の人気は天気のごとく移ろうものです。解剖学や遠近法の価値は不変です。しかしそれらに適用される新しいやり方を常に探し求めなければなりません。ここでの最も大きな問題は、君たちにイミテーションを作らせるのでなく個性を育てさせるためのしっかりとした基礎を提供することです。学習の最初期の段階で一定量のイミテーションは必要でしょう。自己表現には必要なバックグラウンドがあるからです。それは提供します。しかし一つ一つの経験の蓄積のなくして芸術活動は進歩しません。経験とは、君自信の努力や観察、独学や本や巨匠から学ぶなどの行為を通してベストとなるのです。そういった経験は君の実用的な知識と組み合わさる。そしてそのプロセスを止めてはならないのです。新しいクリエイティブなアイディアとは通常、古いアイディアのヴァリアントです。

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この章では、人体の図を生きているものとして取り扱っていこうと思います。その動きの力はその構造と関連しており、その動きはいくつかの種類にわけられます。先ずはヌードから描き始めましょう。そうすれば服を着た人体の描き方もよく理解できます。人体を体積と重さを持ち、光にあたって影ができるものと考えましょう。私達の知っている空間に設定するためです。そして光というのがどんなもので、どのように形作られそして様々な方向の平面にどのように影響するかを理解してみましょう。頭とその構造を他の部分と分けて考えましょう。言い方を変えれば、私は君がオリジナルでかつ説得力があある人体の絵をかけるような基礎を提供します。その人体の絵の解釈、種類、ポーズ、ドラマ、衣装、アクセサリーは全て君のものです。君の絵が広告のためのものであっても、物語を表現していても、ポスターやカレンダーのためのものであっても、君の知識が必要とする基礎は明らかに変わりません。若い芸術家が傾倒してるほどの重要さは技術にはありません。その作品に注ぎ込まれる理想化、つまり生き方と感情の質の方がはるかに重要です。それは、君の服の選択、嗜好と君がマスターした基礎から来る設定です。
世界でもっとも賢い装いは上手く描かれなてない人体に全く有効ではないでしょう。表現または感情は不完全に構成された顔には描かれることはないでしょう。光についての構想と色の値、または人体を完全な遠近法を以って構成しようと望みですらそれなくして色を上手に置くことは出来ないでしょう。君がすべきことは、君が日々目にしている様々なものを美化・理想化していくことです。
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この本の初めから最後までの私の目的。それは君に手を貸して丘の頂上へ導くこと、しかし頂点に達したら、君の背中を押して君自信の勢いで飛び立っていってもらうことです。私が探せる中での最高のモデルを用意しました。平均的な若いアーティストの限られた元手では雇うことが出来ないと知っているので。もし君が私の本から学ぶ時、ただ線から線を、トーンからトーンをコピーするような考え方ではなく、君のためのポーズモデルの光として扱うなら、最終的によりよい結果を導き出すことでしょう。すべてのページに於いて、君のパッドを本の横に置いておくことを薦めます。絵を描くことそのものを絵を描く手段よりも前に持ってくるのです。鉛筆を可能な限り動かし続けなさい。ページの中のポーズを可能な限りいろいろ試しなさい。人体をラフにセットして、それを想像の中ですべての種類のアクションをさせなさい。もし実際のモデルを描く機会が学校なりどこかであったらここで学んだ基礎のベストを利用しすべての手段で参加しましょう。もし君が写真を取ることができるか手に入れることができるのなら、そこから絵を描くこととそこにどんな理想化が必要か足すことに技術を試してみましょう。
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最初にこの本のすべてを読んでからスタートしたほうが全体の手順のプランが理解しやすいでしょう。静物画のような他の種類のお絵かきも補完しておくべきでしょう。それらは輪郭や平面、光と影などの一般的な問題はあらゆる形式のお絵かきに存在します。
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柔らか目の鉛筆に慣れときましょう。それはすごく幅広い光と影を描けます。薄く、細く弱く灰色に描くことに商業的な価値は実際ありません。ペンと黒のインクに切り替えることは面白いだけでなく実際の商業的な価値を持ちます。かなりフレキシブルな道具を一つ使いましょう。紙の上で線を引くのであって押してはいけません。引っかかって裂けるだけです。木炭は習得にはまあまあです。大きい紙かレイアウトパッドは作業に最高です。
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たぶん最高の道はどんな方法であれ君に最高に適した方法でこの本を使うことだと思います。